子供たちとの約束

 私が中小企業のサラリーマンをしていた昭和の末は、まだ景気はよかったように記憶しています。それでも三人のこどもの教育で三人とも大学を卒業させるには、経済的にかなりの無理があると感じていました。豊かでない家庭の事情を説明し、大学を出たいなら、なんとかして大学までの費用は、私達親が負担するけれども、卒業後は自分たちで自立してほしい、と約束しました。
 しかし、財産の蓄えがあるわけでもないので悩みました。そこで以前お世話になったある社長に、この様な会社を起こしたいので出資をしてほしいとお願いし、承諾していただきました。
 平成元年に私を含めた四人で事業を始めました。順調にすべり出し、受注も伸びて十人少々の会社となり、私個人の収入もどうにか増えてきました。三人のこどももそれぞれ一年おきに大学へ進み、二人のむすめは卒業することができました。
 三人目の長男が在学していた頃、突然バブルがはじけ、その煽りで会社も傾き、昼夜なく資金繰りに走り回る状態でした。